「ごめんねえ怒鳴ったりして」
「うん。いいよ」
「あんたに言ってないっての!!ああもうっ、怒鳴らせないでってば!」
勝手に怒鳴っているのはおばさんだ。
それすら愉快愉快と、また吹き出せば、さっきよりも鋭く見つめられる。
自分に関心を向けられたことは初めてだ。
もっと、もっと、話してみたい。
ニッと歯を見せてみると、女はとうとう諦めたように息を吐いた。
「はあ…、ちょっと待ってな。いらない着物あるから譲ったげる」
通りすぎる町人はジロジロと見てくる。
ニヤニヤ笑う人間もいれば、顔を背ける人、やーいやーいとからかう子供まで。
それでも言われたとおり、ひとつの長屋の前で待っていた。
「はいこれ!地味だとか文句は言わないでちょうだいよ?まったく…、ここまでしてやるだけ良いと思いな」
サッと投げられるようにして渡された、1枚の着物と帯。



