敵だろうか。
静かながらにも警戒体勢に入っていると、俺の視線に気づいた男は目を丸くさせながら歩み寄ってきた。
「なんやずうっと見て、ワシが羨ましいがやろう!」
「…いえ、別に」
「ほれ教えてやるき!水切りは気合いと根性じゃ!」
「ちょっ…」
ぐいっと手が引かれ、土手を下るように降りた。
「ええか?こう投げて…、こうじゃ!!」
「………」
まったく分からない。
もっと角度だったり石の持ち方だったり、いろいろあるだろう。
「おまん、女に振られたがじゃろう」
「…は?」
「さっきからじーっと川を見て、女々しいのお。なんや?腰のそりゃ三味線か?」
「………」
これは完全に馬鹿にされている。
そんなものに感化されたとは思いたくないが、俺は平らな石を拾って、川へシュンッと投げた。
タンッ、タタタッ、ぽちゃんっ。
跳ねた回数を数えるまでもなく、得意げな顔で鼻の下をかく男。



