奈落の果てで、笑った君を。





それから俺は気分転換にひとりで外を出歩くことが増えた。

本当の理由としては、またハツネが来てしまった場合に断る言い訳を作るため。


そうじゃないところを出すとするならば、まっさらな朱花の笑顔を見ると、どこか汚してしまいたい感情が芽生え始めたからだ。



「…そろそろ桜が咲きそうだな」



土手に座り、緩やかな川の流れを見つめる昼下がり。

気づけば年が明け、元治元年から慶應元年に変わっていた。


去年より早めの開花が拝めそうだと、目線の先になだれる木へと独りごちる。



「おっ!7回も跳ねたぜよ!!やっぱし水切りは気合いと根性じゃき!!」



タッ、タタタタタッ、タタンッ、ちゃぽんっ。

水面を跳ねる小石ごときに全身で喜んでいる男がひとり、河原ではしゃいでいた。



「それにしても、まっことええ天気じゃ!」



家紋がついた着物に、袴と合わせた履き物は草履ではなかった。

それは西洋の人間が履いているような、くるぶしもすっぽりと隠してしまうほどに長さのある革製のもの。