奈落の果てで、笑った君を。





「私は…水戸藩の役方をしている父を持つ、武家の娘です。そんな女に……こんなことをさせないでください」



水戸藩は徳川御三家のひとつとも呼ばれる、名のある藩だ。


わざわざハツネがその名前を出したということは、自分のほうが格上の存在なのだから断るなどご法度だと。

そう言いたいんだろう。


だがこれも逆効果なんだ。
そんなことをすれば尚、俺は惹かれない。

むしろそこまでするのかと、嫌悪感すら抱く。



「…わかった」



事を済ませさえすれば、こいつは満足するのかもしれない。

さっさとここを出るために利用するのもひとつの手なのではないか。


女を組敷くように畳に倒し、覆い被さる。

腰に差していた2本の刀は瞬時に外して、俺も自分の着物をぐいっと緩めた。



「尚晴様…っ、口吸いを…してください…」



頬に触れると、仄かに広がる化粧の匂い。

赤い唇は自然のものだけでなく、色づけた紅のせいか。