奈落の果てで、笑った君を。





簡単に言ってしまえば、その行為を行うためだけの場所。



「おこしやす。さあさあ、上がっとぉくれやす」



若い男女が入り口付近で行き止まっていては、店主は目を光らせたように俺たちを誘い入れてくる。


違う、やめろ。


そう言ったところで逆に悪目立ちをしてしまうだけだ。

俺は見廻組だからこそ、下手な騒ぎは起こせない。



「では、ごゆっくりくつろいどぉくれやす」



小さな盆に、湯飲みと簡易的な和菓子がふたつずつ。


パタリと閉められた襖。

予想どおり2階に通されると、3畳半ほどの一室が用意されていた。



「これはおはぎでしょうか?…ん、すごく甘くて美味しいですよ尚晴様」



もし、朱花と来ていたならば。

まず2階建てというだけで目を輝かせるんだろう。


格子(かくし)がついている部屋ならば、そこから外を覗いて歩く町人に手を振りそうだ。

そしておはぎも知らぬからこそ俺に聞いては笑って、また食べては笑って、ここがどういう場所なのか知ろうともせず俺にも勧めてくる。