「尚晴様、……ここに行きたいです」
「………」
行きたい場所がある、と言っていたハツネが足を止めた建物を見て、俺はあえて深読みしたくはなかった。
そこは大通りから外れた場所に位置する、とある茶屋。
普通であれば何の躊躇いもなく入ることができるのだが、ここだけは別。
別名を「出合茶屋(であいぢゃや)」とも呼ばれ、いわば不貞関係を行う男女の密会場として使われる場所だった。
「お前は武家の娘だろう。…こんなところを知るべきではない」
「でも私たちは許嫁です…!問題は、ないはずでしょう…?」
「ここは…伴侶を持つ者同士が別の相手と内密に逢引を重ねる場所だ」
「はしたないことは承知の上でございます…!ですがっ、ハツネは…尚晴様とふたりきりになりたいのです…」
その意味は、ただ仲良く茶を飲むということではない。
俺も噂話で聞いた程度だが、まず入るとすぐに2階へ通されるという。
一応は茶を出すという面目のもと案内されるが、最終的には着物を脱いだ男女が身体をまぐわせる。



