奈落の果てで、笑った君を。





「尚晴様、日中はだいぶ暖かくなって参りましたね!」


「…ああ」


「私は春がいちばん好きなんです!尚晴様は好きですか?春」


「…ああ」


「……尚晴様、ハツネはあなた様とずっと一緒にいたいです」



そう言われて、意識がようやく戻ってくる。

何度、何回、今のような言葉を言われたか分からない。


無邪気、と言うんだろう。
このハツネという女も。


だが、やはり違う。

あれ以上のものはどこを探しても見当たるはずがないんだ。


心を揺らがすほど不気味で、まっさらな無邪気。



「お父様もお母様も、尚晴様にならぜひハツネを貰って欲しいと言っております」


「…俺はまだ未熟だ。男としても剣士としても」


「そんなことありません…!私が出会ってきた男性のなかで、あなた様はいちばんに強くまっすぐで、誰よりも素敵なお方なのです…!」



なら、弱い部分を知ったら離れて行ってしまうんだろうな。

強くまっすぐではない俺を知ったら、そうは言わないだろう。