あれほど派手に倒れて、病院まで付き添ってくれたのだ。先生から直接話を聞いていないにしても、なにかしらは耳にしてしまっている可能性の方が高い。
それでもなおこうして一緒に出かけてくれているのなら、少なくとも今の時点で私と距離を置こうとは思っていないと考えてもよいだろうか。
なら、と、私はひとり顔を綻ばせた。
──どうせなら、最後を満喫しよう、と。
ユイ先輩と、好きな人とふたりきりで出掛けられるなんて、滅多にないチャンスなのだから。
「先輩、今日楽しみましょうね」
「ん」
なぜか少し照れたようにうなずいたユイ先輩に、くすりと笑う。
先輩の隣に並びながら、ふと、まるで夢のなかみたいだなと思いながら。
だって、こうして手を繋いで歩いていると、まるで本当のカップルみたいだ。
けれど、今日が終わってしまえば、きっと夢は覚めるのだろう。
ならば覚める前に、この非現実的な一日を心ゆくまで謳歌しなくては。
「足元、気をつけて」
「はい。先輩もですよ。ぼーっとしてたら、転んじゃいますからね」
「さすがに君の前では転ばないよ。俺、かっこよくいたいから」
えー、なんて。先輩はいつでもカッコいいですよ、なんて。
いつも通り他愛もない話をしながら、私たちは水族館行きの電車へ乗り込んだ。
──まだ、確信には触れないままで。



