「水族館!?」
またしても、思いもよらない返答だった。
ポカンとする私に、隣の愁がどういうことだと言わんばかりの視線を向けてくる。
知らない。私の方が聞きたい。本当に、どういうことなんだろう。
立ち尽くす私の手を、まるで当然のように取ったユイ先輩は、細身の腕時計で時刻を確認する。それもやはり銀製のもので、改めて先輩のこだわりが窺い知れた。
「二駅だからそこまで遠くないし、駅と水族館も直通してる。館内をのんびり見て回るくらいなら、問題ないよね……?」
「……まあ……」
「よかった。ちゃんと手は繋いでおくから、安心して」
いやいやいやいや、と内心大パニックになっている私を差し置いて、愁は苦々しい顔をしながらも首肯した。そこで納得するのはおかしいのではないだろうか。
「せ、せんぱ……手、手は、大丈夫ですから!」
「なんで」
「なんで!?」
「嫌?」
さすがに狼狽えて、金魚のように口をパクパクさせてしまう。
そんなわけがない。嫌なわけがない。
好きな人と手を繋げるなんて美味しい状況、いっそ土下座してでも続けたい。それほど夢にまで見たし、本心のところでは拝んででも甘えてしまいたいと思う。
「嫌じゃないなら、このまま繋がせて。俺はわりと……その、結構ぼーっとするときがあるでしょ。こうして手を繋いでいた方が、君を見失わなくて安心する」
ああ……と、なんとも納得してしまう理由だった。
たしかにユイ先輩は、とりわけ絵が関することになると、意識が四方八方に散在しがちになる。むしろ自覚があったという方が驚きだ。



