素直なのか素直じゃないのかわからないな、と私は苦笑する。
姉バカとしては、こういうところも可愛いとしか思えないから困ったものだ。
「あと、あんた」
「……ん? 俺?」
「そうだよ。あんた……えっと、春永、先輩。一緒に出掛けるんだから、責任持って姉ちゃんのこと見ててよ。一瞬でも目ぇ離したら、なにするかわかんないからな」
ん!? と私は仰天しながら愁を凝視する。
今、サラッととんでもない子ども扱いをされた気がした。
よりにもよって、三つ下の弟に。
いつにも増して真面目な顔で深くうなずいている先輩も先輩だけれど、私だって一応もう高校二年生だ。手を繋いでいないと危ない小さな子どもではない。
「あと、あんまり連れ回すなよ。姉ちゃん体力ないし、すぐバテるからな」
「わかった」
「ちょ、っとストップ! 過保護すぎだよ、愁!」
私を心配してのことだろうが、さすがにこれは居心地が悪い。
今回誘ったのは私の方だし、必要以上に気を遣わせたくはないのに。
「だいたい今日は、絵を描きに行くわけで、べつに動き回るわけじゃ……」
「ああ、ごめん。今日は絵は描かないよ」
「えっ」
さらりと否定してきた先輩。
どういうことだ。話が違う。と、混乱しながら視線を遣れば、ユイ先輩はなんてことないように朗らかな──わずかにそうとわかるほどの微笑を浮かべて告げた。
「今日は、絵を描くための素材を見に行く」
「そざい?」
「ええと……対象、の方がいいかな。今日見たものを夏休み中に描くんだ。美術部の活動の一環としてね」
つまり、夏休み中の課題ということだろうか。
「ち、ちなみに、どこへ?」
「水族館」



