モノクロに君が咲く


 さすがに毎日同じ場所で活動しているだけあって、思考回路が被ったらしい。

 体育祭の相乗効果でやたらと騒がしい校内。そんななか、落ち着いて食べることができる場所と言ったら、やはりここに限る。ただし、美術部員限定だけれど。

 たったそれだけのことに心が浮き立つのだから、俺もたいがい単純だ。

 そう思いながらも、ふふんと得意げに鍵を見せてみる。

 あっ、と小鳥遊さんがわかりやすく大きな目を輝かせた。

「せっかくだから、一緒に食べる?」

「いいんですか!?」

「そっちがよければね」

 バッと勢いよく友だちの方を振り返る小鳥遊さん。彼女たちはもうすでにわかっていたようで、そろって苦笑しながら了承の意を示した。

「せっかくだから、お言葉に甘えさせてもらおっか」

「ま、鈴が先輩を前に釣られないわけがないしね」

「やった、ふたりとも大好き!」

 よい友だちなんだな、と思う。見ているこちらも微笑ましい光景だ。

 ただ、小鳥遊さんが同性の友だちと仲良くしているところを見慣れないせいだろうか。少し背中がむずむずして、もどかしいような心地もする。

 俺に向けられる笑顔とは、また違った素の一面に触れたからかもしれない。

「隼もいいよね」

「聞く気ないだろ。べつにいいけどさ」

 隼はジトッと俺を見て、口をへの字にした。

 なんだかんだ俺に甘い隼が断るはずもない、という勝手な算段だが、実際男ふたりで食べるよりは女子も一緒の方が華やかになるだろう。

 まあ、これが小鳥遊さんじゃなければ、誘っていなかったけど。

 さっさと屋上へと繋がる扉を開けて、五人そろって庭園へと降り立つ。