モノクロに君が咲く




「よーっす、結生」

「………………。あぁ、隼か……」

「いや反応おっそ。大丈夫かよ? もうへたばってんのか?」

 体育祭当日。ようやく午前の部が終わり、生徒たちは各自昼休憩に入った。

 それはいいが、暑い。とにかく暑い。

 一刻も早く校舎のなかに避難したい気持ちはあれど、こうも気温が高いと動くことすら億劫だ。体が今にも溶け落ちてしまうのでは、と本気で心配するほど。

 そんなこんなで、俺は待機場所の椅子から一向に立ち上がれずにいた。

「おまえ、俺が迎えに来るってわかってて動かなかったんだろ」

「べつに。まあ、来るとは思ってたけど」

 呆れ顔で俺の隣にどかりと腰掛けた隼は、「ほら」とミネラルウォーターを放ってくる。反射的に受け取れば、それは俺がいつも買うメーカーのものだった。

「水分取ってねえんだろ、どうせ」

「……水筒忘れた」

「アホか? やっぱアホなんだな!? いいから早く飲め死ぬぞ!」

 渡してきたばかりのペットボトルを引ったくったかと思えば、隼は素早く蓋を開けて乱暴に口へ突っ込んでくる。