モノクロに君が咲く


「またハードな」

 自分で選んだわけではなく、気づいたらそれになっていた。どうやら競技決めをする際にぼうっとしていたら、勝手に決められてしまったらしい。最悪だ。

「もうすぐ七月ですもんね。体育祭の頃には太陽ギラギラ、グラウンドは干からびてカピカピになってますよ。今年はどうも例年に比べて気温が高いみたいですし」

「ほんと誰なの、真夏に体育祭やろうとか言い出したの」

 俺は基本的に省エネ体質だ。加えて最低限しか動かない生活を送っている。

 絵を描いている時間が長いからと言えば正当な理由になるだろうが、実際のところ、体力に関しては男として情けなくなるほど皆無と言っていい。

 つまり、限りなく運動不足の俺にとって、体育祭はただの暴挙。学校行事でやりたくないランキング不動の一位。あれは控えめに言っても地獄だ。

「……そっちはなにやるの」

「え?」

「だから、小鳥遊さんはなにやるのって」

 ふと気になったことを尋ねてみれば、小鳥遊さんは虚を衝かれたように目を瞬いた。

「珍しいですね、ユイ先輩が聞き返してくるの」

「…………」

 そんなことはない、と一概に否定することもできず、俺はふたたび黙りこくった。

 自分がコミュニケーション能力に乏しいことは自覚している。相手が小鳥遊さんでなければ、きっとこんな他愛もない会話すらしていないだろう。

 けれど、いざそう指摘されるとへこみそうになる。俺はもう少し、他人と関わる努力をした方がよいのかもしれない。小鳥遊さんに近づくためにも。

「私は応援団です」

「は?」

 素っ頓狂な返しがツボに入ったのか、小鳥遊さんがおかしそうに笑う。