「──私、頑張りますから。生きられるだけ生きて、強くユイ先輩の心に棲みつきます。枯れた桜なんて言わせません。私は絶対に、枯れてなんかやりませんから」

「……ん。鈴は、枯れないよ。鈴はいつだって誰より綺麗に咲き誇ってる」

 ほんのわずかに、ユイ先輩の声に涙が混じったような気がした。

 けれど顔を上げて見てみると、少し切なげな表情のなかには思いのほか真剣な色が灯っている。向けられる視線があまりにも熱くて、かすかに呼吸が乱れる。

「……鈴が頑張ってるのは知ってるからさ。俺も頑張らなきゃいけないよね」

「頑張る……」

「美大、受けるよ。スカウトされてるって言っても筆記も実技も試験はあるし、今さら遅いような気はするけど」

「っ……!」

 ああ、よかった。そう心の底から自分が安堵したのがわかった。ユイ先輩がちゃんと生きていくことを決めてくれた。それは、なによりの私の望みだった。

 ともすれば、生きたいという思いよりもずっと、願っていた。

「……先輩なら、大丈夫ですよ。頭いいですし、実技は間違いなく一位通過です」

「いや、そんな世のなか上手くいかないって」

「上手くいかせちゃうのが先輩じゃないですか。私、知ってるんですから」

 大丈夫。確信を持って、そう言える。

 だってユイ先輩は、歩む道を見つけさえすれば、この世の誰よりも強い人だ。

 これほどまでに才に溢れ、世界に好かれた人を、私はほかに見たことがない。モノクロの世界でもそうなのだから、色づいた世界に生きるユイ先輩はもう無敵だ。

「先輩。──春永結生先輩」

 先輩のなかだけの永遠に続く春で、私は、きっと生きていく。