「結生はまったく他の絵に興味持たねえけど、やっぱ入賞する作品って素人目で見てもスゲーのばっかなんだよね。優劣つけ難いしさ。でも、おまえと小鳥遊さんは、やっぱ毎年抜きん出て上手いよ。全地方見てもそう思う」

 隼はなぜか毎年、わざわざ展示会場までコンクールの絵を観覧に行くのだ。地方会場と都内会場のどちらも欠かさず。そして俺は半ば無理やり、それに付き合わされる。

 まあ大抵は隼が見て回っている間、おれはぼんやりと待っているだけで、まともに展示を見て回ったことはないのだけど。

「……ん、毎年? ってなに?」

「毎年おまえたちの絵が上手いってこと」

「鈴も?」

「あ? なにおまえ、まさかとは思うけど知らないの? 小鳥遊さんも毎年絵画コンクール出してんじゃん。べつに去年に限ったことじゃなくて、ここ数年ずっとさ」

 ──鈴が……毎年、絵画コンクールに。

「おまえが金賞、小鳥遊さんが銀賞。もう定番だろ」

 図らずも思考が停止した。

 つまり、鈴が銀賞を取ったのは去年だけではないと。そういうことか?

「それこそ、五年連続銀賞取ってるんじゃね? ……いや待てよ、違うな。たしか一昨年は部門違いだったか。おまえが中学部門から高校部門に移った年に、一回だけ小鳥遊さん金賞取ったことあるんだよ。あれ、めちゃくちゃよかった」

「……ちょっと、待って」

 俺は呆然としながらスマホを取り出して絵画コンクールで検索する。飛んだばかりのサイトにアクセスして、これまでの入賞作品のページを呼び出した。

 一昨年。中学部門の入賞作品を表示すれば、トップページに表示されたのは。

「……小鳥遊、鈴……」