もう長くはない。でも、きっと先輩と会えない間に私が死ぬことはない。

 気の持ちようというのも捉え方次第だ。ユイ先輩に会えていないのに死んでたまるかという気概は、きっとすべからく私の生命力になる。

「じつは私も、先輩と離れてる間にやりたいことがあるんです。だから一ヶ月後、またふたりで答え合わせをしましょう」

「……そんなことして、なにになるの」

「わかりません。でも、きっと必要なことなんです。今はすごく幸せですけど、幸せだからこそ、真正面から先輩とぶつかって向き合いたい。そうじゃなきゃ後悔……いや、未練になりかねません。さすがに未練を残して死にたくはないので」

 そう言うと、ユイ先輩は絶望を浮かべた顔をしながらも押し黙った。

 優しい人だな、と思う。本当に優しいから、心の底から私のことを想ってくれているから、私のこの突拍子もない考えを無碍にできない。

 そんな先輩の優しさを利用している私は、やっぱりよい子にはなれないけれど。

「……電話とか、メールとか、チャットとかは」

「うーん。電話はだめですけど……それ以外はゆるくいきますか」

 変に真面目な性格な先輩のことだ。あまり離れすぎても逆効果になりかねない。

 そう判断すると、ユイ先輩はさもわかりやすく胸を撫で下ろした。

「じゃあ先輩、また一ヶ月後に──」

「待って」

 ユイ先輩は私の言葉を遮ると、そっと頬に手を添えてきた。

 突然のことに驚いて仰ぎ見ると、不意に唇へ柔らかいものが重なる。その一瞬、世界のすべてが真っ白に染まったような気がした。

「っ……」