「さっきも、言ったじゃん。俺の未来に鈴がいないなんてこと、有り得ないんだよ」
「でも、私がいる未来のことも、先輩は考えてないでしょう?」
「っ……」
「そもそも先輩は、私が死んだ後のことをまったく見据えていないんです。自分の人生もそこで終わると思ってる。違いますか、先輩」
ユイ先輩が動揺したように顔を上げて、なんでと言わんばかりに私を見つめた。
否定も肯定もない。しかしそれこそが答えなのだろう。
「だからこの間、生きてって言ったのに」
「……あれ、そういう意味だったの。というかなんで気づくの」
「先輩はもともと『生』に執着がないから」
私がこの世界から消えると共に、先輩も共に消えようとするのではないか。
最初にそう危惧したのは、ユイ先輩が私を彼女だと言った、あの瞬間だ。
「生きること、だけじゃないですね。先輩は基本的に『絵』以外のことに関しての執着が少なすぎる傾向にありますから」
「……鈴も俺を人形だって言うの?」
「言いませんよ。人形は人を好きになんかなりません」
だけどね、と私は一呼吸置いてから続ける。
「そんな先輩が、私に対しては不思議なほど執着してるでしょう。もしかしたら絵を描くことよりも。自惚れてるみたいで恥ずかしいですけど、だからこそ不安を覚えずにはいられないんです」
それはきっと私だけじゃない。
普段からユイ先輩をよく見ている人たちは、誰しもが思っていることだろう。沙那先輩はその得も知れぬ不安を代表して暴露してくれただけだ。
「先輩は、私がいないと寂しいですか」



