人間は太陽光を浴びないと生きられない存在だと、どこかで聞いたことがある。
引きこもりだと思われがちな俺も、実際は毎日のように屋上庭園で外気に当たっているし、あながち嘘ではないのかもしれない。一向に日焼けしないのは体質だ。
「車椅子はそれ使っていいの?」
部屋の隅に畳んで置いてあった車椅子を指さすと、鈴がわくわくした表情でうなずいた。どうやら今日は本当に体調がいいらしい。
よかった、とひとり胸を撫でおろす。
車椅子を開いて座部分を整えてから、ストッパーをかける。内側に折れたままの足置き場を戻しながら、ベッドの端にぴったりと付けるように寄せた。
これができるようになったのは、鈴が車椅子に乗るようになってからだ。車椅子がこんなふうにコンパクトに畳まることも、意外と重量があることも知らなかった。
腕で体を支えて自ら車椅子に移ろうとする鈴に、俺は嘆息しながら声をかける。
「鈴」
「へ? ……わっ」
どうして甘えないのかな、と少し寂しく思う気持ちを隠しつつ鈴を抱き上げて、車椅子に移動させる。もともと体が小さい上、なにぶん細いから軽い。
隼と比べると圧倒的にもやし扱いされがちな俺でも抱き上げられるから、ありがたいと言えばありがたいのだけれど。
ただ、少し、不安になる。
触れるたびに軽くなっていく体が、そのうち俺が持ち上げることもないくらいに軽くなって、風に吹かれるまま消えてしまうのではないかと。
「せ、先輩、甘やかしすぎですよ」
「甘やかすって言った」
「言いましたけど! うぅ……恥ずかしい」



