モノクロに君が咲く


 もごもごと口籠りながら、こちらの様子を窺うようにして鈴が肩をすくめる。

「……大学、行くんですよね?」

 たしかに俺は受験生、ではある。

 最近どこに行ってもその言葉が付いて回って、心底うんざりしていたところだが、鈴に聞かれると不思議と嫌な気持ちにはならない。

「いや、まだ決めてない。一応、俺の経歴に興味があるらしい都内の某美大からうちに来てくれないかってスカウトはされてるけど」

「えっ!? すごい!」

「すごくないよ。世のなかには俺以上に才能のある画家なんて山ほどいるんだから」

 それに、と俺は行き場をなくした目を逸らしながら心中でつぶやく。

 ──鈴がいない学校なんて、行っても仕方ないでしょ。

「先輩て、謙虚ですよねぇ」

「謙虚?」

「五年連続でコンクール金賞取ってる人なんて他にいませんよ」

 まったく、と鈴が拗ねたように唇を尖らせる。

 五年、というのは、中学のときから換算されているのか。

 前々から思っていたけれど、本当に鈴は俺のことをよく知っている。若干そこに混ざりこむ嫉妬や羨望が気になるが。

「まあ、そうは言っても地方コンだし……」

「でも激戦区の関東です」

「まあ、そうだけど。そもそも、俺はあまり、ああいう他者が評価するタイプの結果は気にしないから。正直、絵に関しては優劣付けるもんじゃないと思ってるしね」

 鈴が一瞬、ぴきりと固まって双眸を瞬かせる。

「……というと?」