「…………っ」
「枯桜病って、知ってますか?」
息を詰めたユイ先輩は、その長い睫毛を伏せながら、わずかに顎を引く。
「……病院で、少しだけ聞いて。調べた」
「あぁ、やっぱり聞いちゃったんですね」
「救急車で運ばれるときに弟くんが救命士に言ってたのと……病院ついてから処置されるまで飛び交ってたから。ごめん、聞くつもりはなかったんだけど」
「いえいえ。それは致し方ありません。むしろごめんなさいっていうか」
けれど、ならばユイ先輩は。
──私が枯桜病であることを知った上で、さっきの告白をしてくれたのだろうか。
「だけど、君の口から聞くまではって思ってた。これまでずっと隠してきた理由もわからなかったし。そもそも、俺なんかが聞いていい話なのかもわからなくて」
ふう、と重々しく一呼吸置いたユイ先輩は、ゆっくりと私の方へ近づいてくる。
「たくさん考えたよ。俺の気持ちを伝えるべきなのか、伝えず隠しておくべきなのか」
でも、とユイ先輩は私の目の前で立ち止まり、思いのほか強い瞳を向けてきた。
「伝えなかったらきっと後悔する、と思った」
「後悔、ですか?」
「そう。……俺は、これから先のことよりも今を大事にしたい」
私とユイ先輩を包みこむように風が髪を攫っていく。
唐突に、もう夏なのかと思った。あと半年もすれば、今年は終わってしまうのかと。
「半年ですよ」
「え?」
「私に残された時間。半年、あるかないかです」
伊藤先生に、年は越せないかもしれないと言われた。
そうノートに書いてあった。付箋とマーカー付きで。



