「興味があるのは、俺の方だ。小鳥遊さんのことならなんでも知りたい。君が見ている世界を見たい。そんなふうに思えば思うほど、溺れていくんだよ」
ユイ先輩は私と繋いだ手をきゅっと少し強く握った。
その手はかすかに震えを伴っていて、私は戸惑いを隠せないまま視線を落とす。私よりもずっと大きな手なのに、真冬の海に浸けた後のようにひどく冷え切っていた。
「せんぱ……」
「──俺は、小鳥遊さんのことが好きだから」
私とユイ先輩を取りこんだ、すべての時が止まったような気がした。
呼吸すら忘れて、ユイ先輩に射すくめられる。
さきほどの胸の痛みがふたたびぶり返し、心臓なのか、喉なのかはわからないけれど、灰を詰め込まれたような苦しさを覚えた。
どこか切なげな色を灯しながら揺れる瞳は、決して人形のものではない。
「……この好きは、君が俺に言う好きと、同じ?」
まるで迷子の子どものようだった。自分でそれがなんなのかもはっきりしなくて、今も答えを探している。不安のなかで執着地点を見つけようと足掻いている。
「俺の好きは、君と一緒にいたいっていう好きだよ」
好き。もう何度、先輩に伝えたかわからない言葉なのに。
そのはずなのに自分が言われる側になってみればどうだろう。
身体が、心が、焼けるように熱い。溶けてしまいそうなくらい、熱い。
けれどその一方で、私の頭のなかは氷水を浴びたみたいに冷えきっていく。
「……どうして、そんなに泣きそうなの」
ユイ先輩の表情が痛みを堪えるように歪んで、私の頬に手が添えられる。
「俺の気持ちは、迷惑?」
そうじゃない。
そうじゃない、と言いたい。



