モノクロに君が咲く


 そうかな、と先輩が不思議そうに小首を傾げた。吸い込まれるようにクラゲが揺蕩う水槽を見つめる立ち姿は、なんともまた絵になる光景で。

 ついくすりと笑みを誘われながら、私はひっそりとこれを描こうと決めた。

 しばらくクラゲを見ていたかと思ったら、先輩はふいに顔を上げた。

 なにかを探すようにあたりをきょろきょろと見回して、ユイ先輩は「こっち」と私の手を引いて歩き始める。

「これ」

「……チンアナゴ? ですか?」

 また海洋生物のなかでもマイナーな生き物の前で立ち止まったユイ先輩は、ふたたびじっとチンアナゴを見つめる。絵描きの観察眼がフル稼働しているような目だ。

 そんなにこの子たちが気になるのか、と不思議に思っていると、ユイ先輩はふと満足そうに深くうなずいた。そして、ひとこと。

「君に似てる」

「え。こ、この子たちがですか」

「うん。ほら、ひょっこり出てくるところとか。そっくり」

 ええ、と私はなんとも複雑極まりない心境でチンアナゴを見つめた。

 くねくねと珍妙な動きをしながら、ときおり砂の底にもぐっては、気まぐれに顔を覗かせている。よくよく見たら可愛い……かもしれない。

 わからないけど、そう思うことにしておいた。

「……ユイ先輩、水族館よく来るんですか?」

 先ほどから思っていたことだった。館内はさして複雑な構造をしているわけではないものの、それにしたって先輩は迷うことなく歩いていく。

 勝手知ったる様子、というか、とても慣れているように見える。

「うん、まあ。たまに来るよ。行き詰まったときとか、気分転換したいときとか」

「せ、先輩でも行き詰まることが……!?」