朝が来た。部屋の中に太陽の光が差し込み、どんどん明るくなっていく。1人の少女は1人の恩人に、行ってきますと告げ、長い長い旅を始めた。


***


 タラニスは太陽に照らされた道をどんどん歩いて行く。旅の途中、色々なものを見て、色々なものと出会った。決して怖いだけじゃない。新しいことを知ることが出来る意味のある旅だった。

 竜の棲む場所は森のさらに奥。そこまでの道のりはとても長い。何日かかるかも分からない。歩いては休み、歩いては休みを繰り返した。

 そして夜が来た。タラニスは足を止め、運良く見つけた洞窟を今日の寝床とした。そしてタラニスは、夢を見た。

 ある女の子と竜の討伐に行くという夢だった。その女の子は少年のことが好きで、少年はその女の子が好きだという。彼女は彼と一緒に旅に出ることを願い、彼は危険だからと1人で旅に出ることを願う。

 でも2人は一緒に旅に出ることになった。夜が来て、眠って、朝が来る。そして遠くから女の子の声が


「……ニス、……起きて。……タラ……ニス、起き……て」


 聞こえてきた。

 タラニスは誰かの声で目が覚めた。目を開けると───、

 そこには信じられない光景が広がっていた。目の前に、マリアがいた。


「タラニス、おはよう」


 ここはあの洞窟のはずじゃあ……。それなのにマリアが今、目の前にいる。あまりのことに頭の理解が追い付かない。


「おは……よう」

「ふふっ。私も一緒に行きたい」


 マリアが屈託なく笑い、俺と一緒に行きたいと言った。そしてすぐにそれはだめだと思った。危険すぎる。俺だけならまだしも、マリアが行って安全に帰って来れるとは思えない。


「だめだよ、マリア……。今来た道を戻って」