ここはどこだろう。遠くから私を呼ぶ声がする。ここは真っ暗で何もない。体が重いな。頭もズキッと痛む。意識が消えていく感覚に怖さを覚えた。


「…リアっ!!……しっかり………っ!!」


 遠くで私を呼んでいた声が一瞬だけど、聞こえた気がした。でも、だめだ。さっきよりも意識がなくなっている。ごめん、タラニス───私、……。そこで、意識を手放した。


***


「…リア、……マリア。……お願いだ、起きて……。起きてくれ……」


 手に温もりを感じた。握られていると安心するような温かさだった。徐々に、働いていなかった脳が動き出して意識が戻っていくような感じがした。私はゆっくりと目を開けた。そこには、とても心配そうで不安そうな顔をしたタラニスが私の手を握って、側にいてくれた。


「タラニス……」


 私は思わずタラニスの手を強く握り返した。そうするとタラニスは、優しく私を抱き締めてくれた。


「タラニス……、ごめん。私がもっとちゃんとしていたら、悲しい思いなんてさせなかったのに…」

「ううん、マリアは悪くない。マリアのことを守れなかった俺が悪いんだ。…それよりも本当に良かった。ありがとう、助かってよかった」


 溜め込んでいた気持ちをゆっくりと吐き出すように、タラニスは優しく言葉を紡いだ。


「おお、目を覚ましたか」


 突然聞こえてきた男の声。私は少し身構えて声を発した男の人を見た。


「マリア、この人はマリアを助けてくれた恩人なんだ。ここで様子を見させてくれていたんだよ」


 そう、なんだ。身構えたりしちゃって悪かったな……。まさか声の主が命の恩人だったなんて。