*煌人*





俺、何か間違った事を言ったのか?



お前の家は、お父さんが料理するんだな――



何気なしに言った言葉。

完璧に悪意なしの、純粋な疑問。

それをぶつけただけなのに、どうしてだよ。凛。



「(なんでそんなに、悲しそうに笑ってんだよ)」



気になって、深く聞こうか迷っていた。

その時だった。

ガラッっと。ドアが開く音がして、俺たちの視線は集まる。


凛の「お父さん」に――



「や、お待たせ。凛」

「ううん、全然だよ」



「……」



俺は、失礼と分かっていながらも二度見した。

いや、二度見どころじゃねぇ。目をゴシゴシかいた後に、三度、四度と……何回でも「お父さん」を見た。

すると、凛がパシッと。

俺の頭にチョップを入れる。



「煌人、見過ぎ」