心のなかで同意しながら、ルイーズはディオンと繋いでいた手を離した。
「初めまして」
リュカに近づいて、にこ、と笑ってみせる。
するとリュカは大いに慌てふためき、目を上下左右に泳がせた。
「あ、は、初めましぇて──じゃないっ。お、おはつにみぇめに、かかります。ま、魔王エヴラールの息子、リュカ、と申します。えと、以後、お、おみしりおきをっ」
盛大に噛みながらではあったが、予想外にきちんとした挨拶を返されて、ルイーズは目を丸くした。もっと気軽に、子どもらしく挨拶するつもりだったのに。
(でも、いいこっぽい)
エヴラールはまたも頭を抱えているようだが、その言い慣れない様子も、それでいて必死に紡ごうとする姿も、ルイーズには好意的に映った。
魔王エヴラールの息子、つまりは王子。その立場にふんぞり返り上から目線に見下してくるような相手よりは、こちらの方が親しみやすくてずっといい。
「ねえ。ふつうに話そ?」
「えっ!?」
「ルゥ、あなたと仲よくなりたい。お友だちになってくれる?」
同世代の子と出会ったのは生まれて初めてだ。
ルイーズは珍しくどきどきしながら、リュカの手をぎゅっと握った。
「ひゃっ、あの、えっと、お友だち……」
リュカは顔を真っ赤にしながら、ふたたびエヴラールの様子を窺った。
けれど彼が首肯した途端、わかりやすく若葉色の目を輝かせる。
「でも、ぼく、お友だちって初めてで……っ!」
「うん、ルゥも初めて。いっしょだね」
ひとつ歳上とはいえ、五歳児と六歳児ではたいした差はない。ルイーズはこの機に〝子ども〟を学ぼうと決意した。



