誇らしい気持ちがあるのか、エヴラールの声質がわずかに柔らかくなった。
「悪魔は負や闇など明よりは暗に惹かれるタチですが、なかには自分のように光のある生活を好むものもいます。ここは、そんな悪魔たちのための領地なんです」
「なるほど。悪魔も人と同じように趣味嗜好はさまざまなんだな」
興味深そうに街を見下ろしていたベアトリスは、納得したように頷く。
(そっか。パパとディーも、全然ちがうもんね)
招かれるままエヴラールの城に入城したルイーズたちは、しかし大門から入ってすぐ内部の異常に気がつく。姿が反射するほど丹念に磨かれた大理石の床面を躊躇しながら歩みつつ、ルイーズはぐるりとあたりを見回した。
(すっごく静か。お城って、もっと賑やかなとこかと思ってたのに)
足音さえ鮮明に聞こえてしまうほど、城内は静寂に満ちていた。中央に伸びる階段口に設えられた燭台には火が灯されているが、明かりも必要最低限で薄暗い。
「……だれも置いていないのか?」
グウェナエルも疑問を覚えたのか、怪訝な面持ちでエヴラールに尋ねた。
「いえ、最低限は」
「おまえのいう最低限がわからん」
「食事係、掃除係、息子専属の侍女をそれぞれ一名ずつ。もちろん外部にはまだ配下もおりますが、この城に常駐しているのはそれくらいですね」
(それはさすがに少なすぎじゃ……やっぱり、よくわからない魔王さまだ)
せっかく立派な城なのに、こうまで誰の気配もないとあまりにもの寂しい。
たいして大きくもないエヴラールの冷然とした声が、だだっ広いホールに反響して返ってくる。何重にも声が重なるその様が、ルイーズは少し恐ろしく感じた。



