父のことを恋しいなんて、思ったことすらなかった。
……母が病で命を落とした、あの日までは。
(ママは、パパのことを愛してたんだよね)
大罪であることを忘れそうになるくらい、母がルイーズに話してくれる父の話はどれも楽しくて幸せな思い出ばかりで。
(でもルゥは……、夜中にママがひとりで泣いてたの知ってるから。ごめんなさいって、ずっと一緒にいたかったって、ママがずっと我慢してたの知ってるから)
だからこそルイーズは、母の命の灯が消える寸前に、ずっと聞きたかったことを彼女に問いかけたのだ。
『ねえ、ママ。……ママは、パパに会いたい?』
──そのとき、母は……ミラベルはたしかに頷いて。
彼女の眦から流れる一粒の雫を見たルイーズは、決心した。
大好きな母が残した最期の願いを叶えるため、父に会いに行こうと。
(パパに会って、ルゥなんて知らないって。いらないって言われたら、ママのところに行けばいいよね。ママの気持ちを伝えられたら、ルゥはそれで十分だし)
逆を言えば、その目的を達成するまでは、あきらめるわけにはいかないのである。
(これは、生きてるルゥにしかできないことだもん)
心のなかで自分に言い聞かせ、ルイーズは目前の大花を見上げた。
打開策を見出すといってもこの環境だ。
朽ち果てた荒野で限りなく手に入るものと言えば、もうこれしかあるまい。
「ねえ、ディー。これ、食べられない?」
ルイーズがザーベスを指さすと、ディオンはぎょっと目を剥いた。



