──否、きっと前の世界の記憶がなければ、なんの疑問も持たず、すべてはそういうものとして受け入れていたのだろう。
けれど、ルイーズは知っているのだ。
人と触れ合うことの温もりを。
さまざまな相手と心を交わさなければ生まれ得ない感情を。
「すごくうれしかったよ。だから、助けたかった。おしゃべりしてみたかった。いまもね、もっと仲よくなりたいなって思ってる」
拙いながらも、ルイーズは必死に想いを伝える。
「……パパとも、おねえさんともね。これからたくさん一緒にいて、いろんな思い出作って、ちょっとずつ家族になりたい。それがルゥの気持ちなの」
「ルイーズさま……っ」
「ルゥと一緒にきてくれる?」
ベアトリスは、大粒の涙を溜めながらこくこくと何度も頷いた。
「どこまでも、ご一緒します。騎士ベアトリスはあなたの剣となり、盾となり、光明を導いてみせましょう。改めてここに、永久の忠誠を誓わせていただきます」
「んふふ。ありがと、おねえさん。大好き」
無事に話がまとまり、ルイーズは胸を撫で下ろしながら父を振り返った。
「パパ。これでいい?」
温かい目で見守っていた彼は、すぐに頷いて指を鳴らす。
直後、なにもない空間からふわりふわりと一枚の紙が舞い降りてきた。
「これ、なあに?」
「悪魔が契約時に用いる誓約書だ」
誓約書を指先で受け止めると、グウェナエルは思案げに「ふむ」と目を伏せる。
「契約内容は、こうだな」
なにやら、ルイーズには聞き取ることができない奇妙な言葉を呟いた父。かと思えば、誓約書の表面が藍色の光を放ちだし、ひとりでに文字が刻まれていく。



