「ええ、あのときわたしは救われたのです。天使よりもずっと愛らしく、そして温かな心を持ったルイーズさまとの出会いに。わたしはきっとあなたと出会うためにこの道を辿ったのだと、本気でそう思うくらいには」
「…………。パパ、ちょっとおろして」
グウェナエルにお願いして地に降ろしてもらったルイーズは、タタッとベアトリスの足元まで走り、下から真っ直ぐに彼女を見上げた。
「でも、悩んでる。どうして? やっぱり、ルゥがいけない子だから?」
「まさかっ! そんなことはいっさい思っておりません。ただ……ルイーズさまの歩んでいく未来に、わたしが必要だとは思えないのです」
「うん?」
ベアトリスの言葉の意味が図りきれず、ルイーズは目を瞬かせた。
「わたしはルイーズさまのこれまでを知りません。ですが、ようやくお父上と再会できて、長らく共にいた使い魔と家族水入らずの生活が始まろうとしている──そんな状況がわかっていながら、部外者のわたしが踏み込んでいくのはやはり……」
ああ、なんだそんなことか。
ようやくベアトリスが危惧していることを悟り、ルイーズはほっと息を吐いた。
安堵する反面、少しばかり驚いたのだ。たしかに念願だった父とは再会したが、家族水入らずだなんて、そんな夢みたいな生活が始まろうとしていたのかと。
寝耳に水であったのは、まったくもって考えが及ばなかったからだろう。
なにしろルイーズにとって〝家族〟は、まだ母とディオンだけだったから。
グウェナエルは父であるけれど、ルイーズからしてみれば、まだ出会ったばかりの相手だ。なんなら、ベアトリスの方が一緒にいる時間は長い。



