「……わたしは騎士になりたかった。大切な者をこの手で守れる、強い騎士に。ゆえに王へ忠誠を誓い、民を守るために尽力し、清廉潔白に生きてきたつもりです。しかし、はたしてそれが正しい選択だったのかと問われれば、いまのわたしは頷けない」
ベアトリスが仲間に裏切られたことは、ルイーズももう知っている。醜い嫉妬から冤罪を吹っかけられ、着の身着のままあんな場所に追いやられた経緯も聞いた。
騎士としての心構えゆえか、いつも気丈に振る舞っているが、きっと彼女も信じていた仲間に裏切られて心に埋めきれない傷を負っているのだろう。
(……理不尽、すぎるよね)
生きたいと願った場所を己の力でようやく手に入れたのに、その結果がこのように報われないものだなんて、あまりにも悲しい。
「王もわたしなど覚えていないでしょう。こちらが認識していても、王にとっては自身に忠義を示す数多の騎士のひとりですから、わたしがいなくなったところできっと誰も気にとめやしない。そう思ったら、急にとても虚しくなって。ザーベス荒野を彷徨いながら、ああわたしの人生はなんだったんだと後悔してばかりいました」
「……おねえさん」
「だからわたしは、死ぬ前に癒されたくて天使を願ったわけですが」
切ない気持ちに苛まれていたのも束の間、ルイーズは情緒を乱される。
「あー……だからルゥのこと天使って」
そこで天使を願うあたりが、ベアトリスの強靭な精神力の顕れなのかもしれない。



