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──魔界に旅立つ前に墓参りをしておきたい。
そんなグウェナエルの希望により向かったのは、ルイーズの家から数分ほど離れた場所だ。道中は獣道が続き、やや険しい道のりではあるが、ルイーズはいつも通り狼姿になったディオンの背中に乗って移動しているので問題はない。
グウェナエルやベアトリスは、さすがにこの程度ならば余裕なようだった。
「ここだよ。ママの眠ってるとこ」
山道を抜けた先。ぱっと晴れた視界のなかに現れた、シードルの花畑。
その中央にそっと鎮座しているのが、ミラベルの墓石だ。ディオンと共に幽谷中から綺麗な形の石を集め、一から丹精込めて制作した手作りの弔い場である。
人が立ち入らない未開の地ゆえに、貴族が建てるような立派な墓石は作れない。
けれども、墓石に彫り刻まれた拙い〝ミラベル〟の文字には、世界でたったひとりの〝母〟に対する愛情が込められている。
「美しい場所だな。ミラベルによく似合う」
「ここでね、よくママとお花を摘んだり花かんむりを作ったりして遊んだの。ルゥとママの、思い出の場所なんだよ。だから、ここにした」
ルイーズは墓前でしゃがみこみ、途中で詰んできた色とりどりの花を添えていく。



