花蜜がパンケーキの表面をまんべんなく覆い、とうとう皿の方まで流れ出したところで、ベアトリスが「る、ルイーズさま!?」と慌てて立ち上がった。
「さすがにかけすぎでは!? そんなに糖分を摂取したら、身体に悪いです!」
「……? ルゥ、太らないもん。だいじょぶ」
「そういうことではなく!」
ルイーズは極めて華奢な体躯だった。
おそらく同世代よりもひと回りほど小柄だし、手足も頼りなく細い。食べる量は普通どころかむしろ多いくらいなのだが、とにかく肉がつかないのだ。
代謝がいいのか、あるいは他の要因か。
なんにせよ、こうして止められたのは初めてのこと。
「いくらルイーズさまが悪魔の血を引いているとはいえ、人の身体を持っているのです。この成長期まっただなか、栄養面をしっかり考えて健康的な食事を摂らなければ、将来お身体に支障が出てしまうやもしれません」
「……うー」
「ベアトリス。それは姫さまの大好物ですし、もう少しくらい……」
ルイーズが頬を膨らませて俯くと、慌てたようにディオンが仲裁に入ろうとする。
だが、ベアトリスは断固として譲らなかった。
「ディオン、保護者の立場であるのならおまえも気をつけろ。いまおまえが甘やかしたことで、数年後、お命に関わる病が発症してしまうかもしれないんだぞ」
「ぐっ……」
「なのでどうか我慢してください、ルイーズさま」
誰も注意してこないし子どもならいっか、と楽観的に考えていたのだけれど、ベアトリスの言うことはもっともだ。
それに。
(病気……)
その言葉を聞くと、どうしても母を思い出して、心の傷がざわめきだす。



