人と悪魔のそれぞれが所属しており、世界の均衡を保つための中枢機関として機能している組織──とはいうが、その実態は謎めいているという。
「前にね、ママが言ってたよ。悪魔は人よりつよつよだけど、立場だけは弱いんだって。掟は〝弱きモノ〟の人間のために作られてるからって」
「また小難しいことを教えるな、ミラベルは」
「でも、ルゥはね。それって、ちょっとずるいなって思ったの」
ルイーズはちゃんと理解していた。
理解できてしまったからこそ、不平等極まりない約束事に違和感を覚えた。
「だって、約束って。どっちもおんなじことを守るから、約束なのに」
「そうですね、姫さま。ディーもそう思います」
うんうんとなぜか誇らしげに頷く従者を横目に、ルイーズは続ける。
「掟ってよくわかんないよ。パパ」
「……そうだな。実際、水面下ながら長いこと問題視されてきたことではある」
グウェナエルはどこか答えあぐねたように言葉を濁す。ルイーズ相手にどこまで話すか悩んでいるのか、食事をやめて眉間を指先で揉みほぐし始めた。
「しかしまあ、この〝教会〟がある限りは変わらないだろうな」
「どして?」
「アレの実態は、俺にすらわからんが。……大魔王を封印する術を持ち合わせている時点で、まあお察しだ。掟には人も悪魔も容易に逆らえん」
(たしかに……大魔王が封印されちゃうって、改めて考えるとすごいことかも)
大聖女ミラベルと大魔王グウェナエルの掟破りは、前代未聞。
それこそ、世界をひっくり返すような異例の事態だったと聞いた。



