~四章 ちびっこ聖女と二度目の旅立ち~


「行く。ルゥ、魔界行きたい」

 久方ぶりにしっかりとした朝食を摂っている最中。

 再会したばかりの父から投げかけられた「魔界へ共に行くか」という問いに、ルイーズは食いつくように答えていた。悩む間もなく、ほぼ反射的だった。

「即答だな」

「だって、パパ行っちゃうんでしょ? ルゥも一緒がいいよ」

「そうか。ならばそうしよう」

 もちろんルイーズにとって、このルエアーラ幽谷にある我が家は大事な場所だ。

 物心ついた頃にはすでにここにいたのだ。たった五年、されど五年。母とディオンに愛されて過ごし、かけがえのない思い出がたくさん残っている。

 けれども、グウェナエルの封印を解くためにルエアーラ幽谷を出ると決意したそのときから、ルイーズのなかでひとつの区切りはついていた。

 なにせ、もう二度と戻らない──否、戻れないと思っていたから。