「まあ、否定はせんが。とくに人からすれば、我らの文化は到底理解できんものだろうからな。ミラベルも、階級の奪い合いについては常に嫌悪を示していた」
悪魔の階級は上から大魔王、魔王、上級悪魔、中級悪魔、下級悪魔と続く。魔界の悪魔の六割は中級悪魔で、その他はだいたい一割ずつという内訳だ。
階級は完全に実力主義で、己の称号より高位なものを得たかったら、その称号を持った相手を倒せばいい。すると、物理的にその者より強いことが証明されて階級が入れ替わる。難しいことなどいっさいない、至極明快で、至極単純な文化だ。
とはいえ、最高位の〝大魔王〟という称号においては特別だった。
なにせこれは、魔界でたったひとりしか得られない称号だから。
その称号を得た者こそ、史上最強の悪魔として魔界の覇者に君臨するのである。
「しかし、そうか。ならばせめて、封印される前に大魔王の称号だけでも置いていけばよかったな。あのときはそこまで頭が回らなかったが」
「いやいや……そんな爆弾だれも背負えませんし、ぽんと置いていかれても困るでしょう。現在の魔王三名だって、どうせ陛下の足元にも及びません」
「わからんぞ。なにせ封印前に消費した魔力は回復しきっていないうえ、五年も眠っていたせいで身体がえらく鈍っているからな。いまおまえに奇襲をかけられたら、案外一本取られるやもしれん」
「ご冗談を。──まあ、姫さまに危害を加えようとするなら話は別ですが、あなたに限ってそれはないですしね」
(……どこまでも従者の鑑だな、こやつは)
本気でやり合ったら、本当にいい線までいくかもしれない。



