「まず、そうですね……。現在の魔界は、陛下が封印される前とは体制が大きく異なっています。かつて陛下がおひとりで支配していた地は大きく三つに分かたれ、それぞれの地を各魔王が治めている状態です」
魔界──それは、その名の通り悪魔が棲みつく世界だ。
人界とはクウェアータ森林という濃霧の森を通して繋がっているが、普段は立ち入り禁止になっているために、人も悪魔も互いの世界を行き来することはない。
「そこまで変わって、人界との関係に変化はないのか?」
「ええ、人界とはとくに変わりありません。……クウェアータ森林は、陛下とミラベルさまの件があってからより警備が強化されたようですが」
「はっ……ま、そうだろうな」
グウェナエルがミラベルと別れることになった地。それがまさに、このクウェアータ森林であった。あの〝最後〟を思い出すと、いまだに苦いものがこみ上げる。
「それで? 魔王はともかく、大魔王はいないのか」
「いたらびっくりでしょう。いったいどこから持ってきたんですか、その称号」
「作ればいいだろう。俺など死んだようなものだし」
「なにを寝ぼけたことを……。一部、陛下の座を継ごうと〝自称〟で名乗りあげた悪魔はいたようですが、それらは総じて魔王に潰されてますよ」
えらく剣呑な目をして、ディオンがわざとらしく肩を竦めてみせる。
その様子がなんともツボを突いて、グウェナエルはつい苦笑してしまった。
「物騒だな」
「悪魔なんて別名〝物騒〟みたいなものです」



