「こう言ってはなんですが……むしろ自分は、姫さまが素直に陛下を〝父〟として受け入れていることが驚きなのです。正直、心配なくらいに」
だろうな、とグウェナエルは口にこそしないが同意する。
(ほかならぬ俺もこれは予想外だ。……拒絶されるよりは、まあマシだが)
立場的に致し方なかったとはいえ、ルイーズは五年間──人生のほとんどを、この未開の地〝ルエアーラ幽谷〟で引きこもりながら過ごしている。
普通なら、慣れない他者に遭遇しただけでも取り乱しておかしくない。
にもかかわらず、ルイーズはいっそ違和感を覚えるほどに受け入れていた。
(ベアトリスの件もそうだが、やはりあの子は少し物わかりがよすぎるな)
物事のすべてを達観しているように見える。およそ五歳児とは思えぬほど。
一方で抱っこをせがんできたりと、時折、見目通りの子どもらしさも持ち合わせているし、どうにも掴めないものを持った幼子だ。我が娘ながら攻略にはなかなか時間を要しそうだ、というのがグウェナエルの率直な感想であった。
「ところで、ディオン。魔界はいまどうなっている?」
グウェナエルは、わずかに声音を落として尋ねた。
「魔界、ですか。こちらに来てからは、自分もごくたまに様子を見に戻るくらいだったので、ある程度の現状しかわからないのですが」
「かまわん。状況さえわかればいい」
即答すると、ディオンは苦笑しながら「承知」と頷いてみせた。



