◇
──目覚めたとき、ミラベルの記憶が濁流のように流れ込んできた。
グウェナエルとミラベルが別れたあの日から五年。ミラベルとルイーズ、そしてディオンが、ルエアーラ幽谷で身を隠しながら過ごした日々の記憶だ。
ミラベルの記憶にあるルイーズは、幼いながらも賢く聡い子だった。
だが、その賢さこそルイーズにとっては〝危険〟なのだと、ミラベルは言う。
『お願い、グウェン。あの子を守って。そして、正しく導いてあげて』
ルイーズがその身に宿している力は、到底計り知れない。
大聖女と謳われたミラベルさえも超える力──それは得てして、ルイーズという存在自体を蝕む枷となりかねないのだと、彼女は神妙に告げた。
『ルゥはいい子すぎて、いつもひとりで抱えてしまうから。賢いからこそ、自分自身には疎いのよ。心の傷も、痛みも、見なかったことにしてしまえるの』
よほど愛娘が心配だったのだろう。肉体が失われながらも意思の欠片となって現れたミラベルは、久しぶりの再会だというのにルイーズのことばかり話していた。
だが、それでよかった。
ルイーズは、ふたりにとって、なににも代えがたい宝物だから。
『ごめんね、グウェン。わたしは、本当の意味であの子を守り抜いてあげられなかった。小さな世界に閉じ込めて、危害が及ばないようにするのが精いっぱいで』
「そんなことはない。おまえはよくやっていた」



