だが、グウェナエルは片手を顔に当て、なぜか悲愴な様子で天を仰いでしまった。
「……やめてくれ、ルイーズ。おまえはそんなことしなくていい。娘だろう」
「でも」
「呼び方も〝パパ〟でいいんだ。ミラベルを〝ママ〟と呼ぶのに、父親だけ父上なんて他人行儀すぎるしな。頼むから、普通の親子らしく接してくれ」
大股で歩いてきたグウェナエルに、ルイーズはまたもや抱き上げられる。
(パパにいらないって言われたら、ママのとこに行こうって思ってたのに)
どうやらこちらも、思っていた以上にルイーズへの愛が深いらしい。
これでは逃がしてはもらえなさそうだ。
純粋に嬉しい気持ちはあるけれど、一方でやはりどこか慣れないこそばゆさを感じてしまいながら、ルイーズはグウェナエルに抱きついた。
「……じゃあ、パパも〝ルゥ〟でいいよ。ママも、ルゥって呼んでたの」
「そうか。ならばそう呼ぼう。──ルゥ」
「うん」
グウェナエルは安堵を滲ませながら目許を和らげて、ルイーズを撫でた。
「さて……目覚めたからには、このような悪質極まりない場所にもう用はないな。早々に立ち去るとしよう」
「ルゥのおうち、帰る?」
「そうだな。ミラベルの記憶上ではルエアーラ幽谷だったが、相違ないか?」
「うん。でも、帰れるかな?」
戻るにも、まず道がわからない。そのうえ、このザーベス荒野は、一度足を踏み入れてしまえばもう二度と出られないとも言われている場所だ。
だからこそ、ルイーズたちも立ち往生してしまっていたわけで。
(おうちなんて、もう二度と帰れないかもって思ってたけど)



