一方、グウェナエルはベアトリスの騎士然とした態度に機嫌をよくしたらしい。
満足そうに目を細めると、深く顎を引いて応える。
「害のある人間ならば排除しようと思っていたが、やめておこう。ルイーズが救った命ならば、父親の俺も守らねばならないからな。その命、大事にするといい」
「はっ。寛大な御心に感謝いたします」
上に立つ者──覇者としての風格には、さすがのルイーズも圧倒された。そしてふと、自分もディオンやベアトリスのようにへりくだった方がいいのかと迷う。
いくら娘とはいえ、ほぼ初対面だ。それも大魔王。抱っこされている時点でいまさらな気はするが、ルイーズとしても大魔王の機嫌は損ねたくない。
なんといっても、今後、末永く付き合っていくだろう相手だ。
「パパ、ごめんね。ルゥ、おりるよ」
「うん? なぜだ」
「おろして」
眉尻を落としつつ、グウェナエルは名残惜しそうにルイーズを降ろしてくれた。
地に足を付いたと同時、ルイーズはタタッとディオンのもとへと駆ける。
「こら、どこへ行く」
ディオンとベアトリスの真似をして、その場に片膝をついてしゃがみ込む。胸にちょんと手を当て、ぺこりと頭を下げれば、小さいながらも立派な忠誠ポーズだ。
もちろん、敬意を向ける相手は、絶賛硬直中の父親である。
「パパ……じゃなかった。おとうさま……じゃない。えっと、ちちうえ……?」
「そうですね。正式な場では父上がよろしいかと」
「うん。じゃあ、父上。お会いできて、うれしいです」
小声で助言してくれたディオンに感謝しつつ、最大限のお淑やかさで告げる。



