「っ……いいえ、陛下。自分は賜ったお役目をまっとうしたまでに過ぎません。なによりこれは自分で選んだ道ですから」
「くく、そうか。相も変わらず律儀なやつだな」
ディオンはもともと、大魔王グウェナエルの配下だったのだという。
だが遥か昔、とある出来事で命を救われミラベルの使い魔になることを決めたとき、グウェナエルは『おまえはおまえの道を行け』と快く送り出してくれた──。
ルイーズは以前、ディオンからそう聞いたことがあった。
「……少し、待ってくれないか」
ふいに震えた声で会話を遮ったのはベアトリスだ。
「わたしには、もはやなにがなんだかわからないのだが……本当に大魔王グウェナエルなのか? パパとはなんだ。ルイーズさまは、人ではない、と?」
「いかにも、俺はまさしく〝大魔王グウェナエル〟だが。ルイーズに関してはどちらとも言えんな。人でありながら悪魔の血を持つ。どちらの純血でもない」
グウェナエルの手が、慈しむようにルイーズの頬に触れた。
「……どこの誰かは知らんが。おまえもこの国の人間なら知っているだろう? 大魔王グウェナエルと大聖女ミラベルが犯した〝最大の罪〟は」
静かに返された言葉に、ベアトリスは両眼を見開いて身を硬くする。
(うん。まあ、びっくりするよね。でも、大魔王を前にしても取り乱さないのはすごいかも。さすが、騎士さま。精神力がつよつよだ)
封印されていた大魔王が目の前で解き放たれたというのに、ベアトリスは困惑した様子を見せながらも冷静さを失ってはいなかった。
そのことに素直に感心しながら、ルイーズは彼女を見遣る。



