ルイーズはグウェナエルの左耳に右手を伸ばす。
空いた左手で自身の髪を払い、いつもは隠している耳を露わにしてみせた。
「ね?」
「……ああ、本当だ。俺の耳とそっくりだな」
グウェナエルの声は低く落ち着いた響きを伴っていた。それでいてしっとりと鼓膜の奥まで届くので、いっそ心地よく、なんだか眠たくなってきてしまう。
(怖いけど、怖くない。不思議な感じ)
懐かしい、と表現してもいいのかもしれない。生まれたばかりのルイーズが父と過ごした時間はわずかだったはずだが、心や身体が覚えているのだろうか。
「ねえ、パパ。ママと会えた?」
「会えたさ。ルイーズのおかげでな。おまえが連れてきてくれたのだろう?」
「ママ、ずっとパパに会いたがってたから」
ルイーズだけが見えていたわけではないのなら、やはりあれは都合のいい幻覚などではなかったのだろう。
ならば、さきほど感じた家族の絆も気のせいではない。
「あのね、ルゥもね……パパに会いたかったよ」
「……俺もだ、ルイーズ。眠っている間、深淵に囚われた意識のなかで幾度となくおまえたちのことを考えた。たかが五年、されど五年──愛娘の成長をこの目で見られなかったことは、俺のなかで最大の過失になるだろうな」
悔いを噛みしめながら述べ、グウェナエルはルイーズの髪越しに口づけた。
慈愛に満ちたそれは、ルイーズの不安定だった心を優しく包んで癒してくれる。
思わずぐりぐりとグウェナエルの肩に額を押しつけると、その様子を見ていたディオンが「姫さま……」と涙声で呟いたのが聞こえた。
「ディオン。おまえにも、世話をかけたな」



