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身体の力がガクッと抜ける感覚と同時に、ルイーズを包んでいた光が解けた。
「姫さま……っ」
ぽてっと尻もちをついたルイーズのもとへ駆け寄ってきたのは、顔面を蒼白にしたディオンだった。どうやらあの真っ白な空間から放り出されたらしい。
「ディー……?」
「いったいなにが……!? 突然、姫さまが光に包まれて──」
なにかを言いかけたディオンだったが、ふいにハッと息を呑み、口をつぐんだ。
彼が見上げた先を追ってみれば、なんと石碑の上に〝父〟が浮かんでいた。
「パパ」
ルイーズはほぼ無意識に呟く。
その小さなひとことに「パッ!?」と目を剥いて後ずさったのはベアトリスだ。
唐突に大魔王グウェナエルが現れたともなれば、混乱するのも無理はない。
気の毒に、棒立ちしたまま絶句してしまっている。
だがもはや隠せる状況でもないので、ルイーズは早々にごまかすことを諦めた。
「……くくっ。いやはや、まさか娘に起こされる日がくるとは思わなんだ」
瞑目していた彼は、トン、と軽く地面に降り立つと、ようやく瞼をあげた。
「これほど幸福な目覚めはないな。とても気分がいい」
ルイーズへ視線を落としたグウェナエルの面持ちは、ただ穏やかだった。
微笑を浮かべた彼が歩みを進めると同時に、ルイーズを支えるように付いていたディオンが一歩下がった。姿勢を正して片膝をつき、胸に手を当てて頭を垂れる。
一方、ルイーズはどこかぼうっとしながら〝父〟を見上げた。
「ふむ、ミラベルによく似ている。人寄りなのだな、ルイーズは」
「……うん。ルゥ、ママにそっくりなの。でもね、パパにも似てるんだよ」
思いのほか優しげな物言いに、ルイーズの緊張は容易く解けた。
よろよろと立ち上がり、グウェナエルに向かって「だっこ」と両手を伸ばす。
「なんだ。さっそく甘えてくれるのか?」
グウェナエルはどこか嬉しそうに目を細め、ルイーズを抱きあげた。
(ん? 視界が高い?)
抱えられてみると、ディオンよりも幾分か背丈があるようだった。
そのぶん地面との距離も生まれるが、グウェナエルはしっかりとルイーズを抱えてくれているので不安はない。存外、その抱きかかえ方はこなれていた。
「この耳はね、パパとおそろい」



