(ルゥは、パパの封印を、解きたい)
強く、強く願うのだ。
そうすればこの力は反応してくれる。
ルイーズの心の声に応えて、次にどうすればいいかを教えてくれる。
(パパに会いたいの。会わせて)
──刹那。聖女の睡宝にヒビが入り、パリン、と割れた。
「えっ」
驚いて両手を広げたのも束の間、ルイーズの身体は溢れ出た深碧の光に包みこまれる。視界を埋め尽くしたその色を、ルイーズはよく知っていた。
(うそ、ママの)
そう、これはミラベルの聖女の力。
彼女が、聖光力を使うときに見えていた綿雲と同じ色だったのだ。
「っ……!」
わけもわからないまま顔を上げた瞬間、ルイーズはその光景に思わず手のなかで粉々になりつつあった聖女の睡宝を落としてしまった。
ぱらぱらと零れたそれは、地につく前に消えていく。
(ああ、そっか)
真っ白だった空間は、母の力の色──深碧に染まっている。
そしてルイーズの前には、あまりにも幸せそうに抱きしめ合う者たちがいた。
(……やっと、会えたんだね。ママ)
漆黒の外套をなびかせ、首に抱きつくミラベルを愛おしそうに抱きしめ返しているのは、おそらくルイーズの〝父〟だろう。
──大魔王グウェナエル。
そんないかめしい名前から、どんな恐ろしい見目の悪魔なのかと構えていたのに。
(なんだ。ルゥのパパって、けっこうかっこいいんだ)
闇で染め上げたような濡羽色の髪と、地獄の炎を思わせる紅蓮の瞳。凛とした出で立ちこそ威厳を感じられるが、思わず見入ってしまうほどの端麗な風貌だ。
女神を体現したようなミラベルとは好対照でもある。



