ミラベルはそっとルイーズの頭を撫でるように手を動かすと、胸元に下げていた聖女の睡宝に触れた。実体はないはずなのに、聖女の睡宝は弾かれたように揺れる。
「……これ?」
『ルゥは賢いから、もうどうすればいいかわかっているでしょう?』
しばし躊躇ったあと、ルイーズはこくんと頷いてみせた。
『あなたならきっとできるわ。大丈夫、自分を信じて』
求められているのは、大魔王グウェナエルの封印を解くこと。
このまっさらな空間がどこかなど知る由もない。
けれど、ほかでもないミラベルがそう言うのなら、きっといま、この場所で、ルイーズが宿している聖女の力──聖光力を使えということなのだろう。
(……このママは、もしかして聖女の睡宝に宿ってたママの心なのかな?)
ルイーズが持っている聖女の睡宝は、ミラベルが死ぬ前、彼女自身が作り出したものだ。聖女の力の源を丸ごと閉じ込めた、とルイーズは聞いている。
そこに、彼女の意思や心が混ざったとしても不思議ではないのかもしれない。
ならば、やることはひとつだ。
なにしろルイーズは、そんなミラベルの──愛する母の願いを叶えるために、ここまでやってきたのだから。
「……ルゥ、がんばるね。ママ」
聖女の睡宝を首から外し、ルイーズは両手で握りしめて瞼を閉ざした。
心をすみずみまで研ぎ澄ませる。身体の中心から聖女の力を操り、聖女の睡宝と結び合わせていく。いつもやっていることだ。迷いはしない。
淡く光っていた睡宝は、その結びが強くなればなるほど光を増した。指の間から漏れ出る青白い光は、やがて真っ白な空間をも青く照らし出す。



