「……ともかく、まずはあなたを見つけた経緯からお話しましょう。改めて自分は、姫さまの従者であるディオンと申します」
「姫、従者……。先ほどから思っていたが、もしやルイーズさまはどこかの国の王族かなにかか?」
王族。自分には馴染みのない言葉なのに、ルイーズはついドキッとしてしまう。
一方、ディオンはまったく狼狽えることなく、平然と同意してみせた。
「ええ。どこの国か、に関してはお答えしかねますが。姫さまは姫さまであるからして姫さまなのですよ。自分の唯一無二の姫さまでもあります」
(姫さまのゲシュタルト崩壊……)
ルイーズは傍らで遠い目になるが、ベアトリスはなぜか納得したように首肯した。
「なるほど。そうか、わかった」
「おや、ずいぶんと物わかりがいいですね。そういう方は嫌いではありませんが」
「命を救ってもらった身で無闇に探るつもりはないからな。それに、〝姫君〟は往々にしてさまざまな事情を抱えているものだ。とりわけ死の地にいるともなれば、複雑な事情があるのだろう」
はあ、とベアトリスは憂いを乗せて嘆息した。
「……他ならぬわたしも、人の立場をどうこう言えるものではないしな」
「というと? あなたも王宮絡みの者ですか?」
「ああ。こう見えてもわたしは、王立騎士団で女騎士をしていたんだ」
「おうりつきしだん」
ルイーズが拙く言葉を追いかけると、ベアトリスはふっと目許を緩めた。



