ルイーズの言葉に、ベアトリスは奇妙そうな顔で目を瞬かせる。
そして、なにやら思案気に腕を組んだ。
「……わたしが、死んでいない? だが、わたしは死の地──ザーベス荒野に放流されたはず……。そう、そしてとうとう力尽きて命を諦めたときに願ったのだ。とびきり愛らしい天使さまに会わせてくれたら、それに免じてわたしをこんな目に合わせた裏切り者どもを呪わずに天へと昇ってやろうと」
「うん。でも、ごめんね。ルゥ、あなたのこと助けちゃった。倒れてたから」
「助けた……」
「ルゥ、聖女なの」
尖った耳が見えないよう隠しながら、ルイーズは前髪を持ち上げて聖刻印を見せる。
それをぎょっと視認した瞬間、ベアトリスはコンマ何秒の間に姿勢を正した。
「聖女さまだとはつゆ知らず、大変なご無礼を……っ!」
胸に手を添え片膝をつき、ベアトリスは勢いよく頭を下げる。
「……へっ」
「よりにもよって崇高な聖女さまを天使呼ばわりするなど、騎士としてあるまじき失態……この罪、我が命をもって償わせていただきます!」
待って待って待って、とルイーズは慌てた。
自らの首を締め上げようとするベアトリスの腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「だめ。死んじゃだめだよ。命を大事にしない人は、ルゥ、きらいなの」
「っ……聖女さま」
「聖女だけど、その呼び方はイヤ」
せっかく助けた命を、早々に散らされてはたまらない。
(というか……聖女って、そんなにすごいの?)
この世界において、聖女は女神にも等しい存在。
それは以前、ミラベルやディオンからも聞いたことがあるが、まさかこれほどまでとは思っていなかった。



