やがて彼女の瞳は、傍らで見守っていたルイーズを捉えて左右に揺れる。一瞬そこに垣間見えたのは絶望と希望。相反するそれに、ルイーズは狼狽えた。
だが、次に彼女の口から放たれたのは、あまりにも予想もしない言葉で。
「……ああ………………天使だ」
「…………ん?」
「そうか、わたしの願いに応えてお迎えにきてくださったのだな。しかし、なんと愛らしい天使さまだろうか。名はなんと言う? それとも天使は名を持たないか?」
女性にしては低く艶やかで耳心地がよい声音だ。
だが、やたらと饒舌に発せられた言葉の意味は、残念ながら最初から最後まで理解不能だった。捲し立てるように問われ、ルイーズは面食らいながら両目を瞬かせる。
「……なんて?」
「そうか。やはり、天使さまは天使さまなのか」
「や、ルゥは、ルイーズだけど……」
「ほう。ルイーズさま……なんと、名の響きまで愛らしいとは」
おねえさんはなぜか顔を片腕で覆って、感嘆とも取れるため息を吐いた。
「ルイーズさま、どうか頼む。わたしを天へ連れていく前に、その小さく可愛らしい身体を一度だけ抱きしめさせてはくれないか。一度でいい……そうすればわたしは、なんの悔いも憂いもなく、この上ない幸せに包まれて天へ往け──痛っ!?」
ルイーズの頬に伸ばされた手を、容赦なく叩き落としたのはディオンだ。
急転直下の勢いで振り下ろされた手刀には、ルイーズの方が驚いてしまう。ビクッと両肩を跳ね上げながら従者の顔を窺って、さらに狼狽する。
「誰の許可を得て、自分の姫さまに触れようとしているのです……?」



