ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~


 そばを離れていたのはほんの一、二分であったのに、ディオンが戻ってくるまで耐えきれなかったようだ。警戒心もあったものではない。

(まったく、困ったお方ですね。姫さまは)

 持ってきた花弁で手早くルイーズの寝台を拡張し、ふたりが並んで寝られるほどのスペースを確保する。そうなると、さすがにこの地下室では手狭で窮屈感が出るが、ほかでもないルイーズがそう望んだのだから致し方ない。

 ディオンは眠っているルイーズを起こさないよう抱えあげ、小さく息を吐いた。

(……この女はおそらく荒野流しにあった者でしょうね。罪人の香りはしませんが、はたしてなんの罪を犯したのやら)

 ザーベス荒野は、およそ人が生き抜ける環境ではない。

 それゆえに、人界──とりわけここディステラ国では、罪人の処刑場としてしばしばザーベス荒野を用いる。ディオンは、そう風の噂で聞いたことがあった。

(あえてこの場所が選ばれるのは、罪人の処刑になにかしら不都合があってひた隠しにしたい場合。となると、王宮絡み、でしょうか)

 通称〝荒野流し〟。

 それは、処刑者を着の身着のままザーベス荒野に放置するという、ごくごく単純かつ明快な処刑法だという。連行する際は王家が携える竜を用いる。よく躾けられた竜は罪人をザーベス荒野に捨て置くと、利口にもひとり王都まで帰還するそうだ。

 命あるままというのは一見甘いようにも思えるが、その実、至極残酷だ。ただでさえ毒素にまみれた地──食糧もなければ、水源もない。加えて昼夜の気温差という猛撃にあえば、普通の人間はそう長く持たないだろう。

 惨い所業だ。どうせ死ぬのなら、いっそ……とディオンなら思う。